「これって、成果って言っていいのかな?」
「自分の仕事って、ちゃんと価値があるのかな」。評価の時期、自己評価シートの「成果」の欄を前にして、手が止まっていない?
深海3000mにはね、自分で光るお魚がたくさんいるんだ。でも、その光は海の上からはまず見えない。光っていないんじゃなくて、見ている場所から遠すぎるんだよね。
数字で評価されない仕事も、少し似ているかもしれないね。営業の人は「今期の売上はいくら」と書けば済むのに、研修や事務や総務の仕事は、何を書けば成果になるのかがわかりにくい。報告書に自信があっても反応がない。数字の出る人ばかり評価されている気がする。そんな声を、ボクは深海からたくさん聞いてきたんだ。
そうするとね、「アピールが下手な自分が悪いのかな」って、だんだん自分を責めたくなっちゃう。
光ってるのに、見えないだけかもしれないよ?
アピールが下手なだけ、なのかな?
ボクの相棒はね、ティール組織、つまり上司が一人で決めるより、みんなで考えて動くことを大事にする組織を目指している会社で、人材開発や組織開発の仕事をしているんだ。評価は360度評価で、仲間同士でつけ合うしくみなんだって。
それでも相棒は、声が大きい人や、自分の成果を具体的に言葉にできる人が評価されやすいと感じているんだ。自分から周りに伝えないと、評価は上がらないとも感じているんだって。相棒は、それがあまり得意じゃないんだ。
じゃあ、やっぱり伝え方が下手なのが悪いのかな?
自分をよく見せるふるまいは、たしかに評価に混ざるみたいなんだ。でも、その効果は小さいって言われているんだよ。伝え方は少し効く。でも、伝え方だけで評価が決まるわけじゃないんだね。
だからね、「アピールが下手な自分が悪いのかな」って思ったとしても、それが全部当たっているわけじゃないと思うんだ。うまく話せないことと、仕事に価値がないことは、別の話だよ。いまはまだ、うまく言えなくていいんだ。
じゃあ、ほかに何が光を遠くしてるんだろう?
価値を受け取る人と、評価する人が別なんだ
相棒はね、研修の受講者アンケートの点数を出してみたんだって。でも、それで本当に成果と言えるのか、自分でも疑問だった。そこで「施策のあと、こんな行動の変化があった」とエピソードで伝えてみたけれど、周りの反応は特に変わらなかったんだ。
相棒は、その理由をこう感じているんだ。研修で価値を受け取っているのは、受けた人たち。でも、相棒を評価するのはその人たちじゃない。評価する仲間は、その価値を直接受け取っていないから、成果だと感じにくいんじゃないかって。
研修じゃなくても同じかもしれないね。総務なら現場の人、事務なら書類を受け取る人。価値を受け取る人と、評価する人が別なことは、少なくないと思うんだ。

評価の時期には、何を達成したかを数字や実績で見せる必要があるんだって。仲間同士で評価していても、上司に当たる人には数字の成果も見せる。相棒は、そのほうがむしろ納得できると感じているんだ。声の大きさだけで決まるよりは、ってことなんだって。
『ティール組織』という本は、組織の形を段階に分けて、色で描き分けているんだ。そのひとつが、成果を測って、出した人を評価する「達成型」。相棒の会社がティールを目指しながら数字も求めるのは、いくつかの色が重なっているからなのかもしれないね。
それに、数字と人の評価は、重なるところはあっても、片方で片方を置き換えられるほどは一致しないんだって。相棒の会社で、仲間の評価と数字の両方が求められるのも、そのせいかもしれないね。それに相棒の施策は、効いてくるまでに時間がかかるものが多いんだって。評価の時期には、まだ形になっていないこともある。数字にしにくい仕事ほど、その間に挟まりやすいんだ。
光が届かないのは、届ける道がまだないからなんだね
アンケートもエピソードも、つなげば“道筋”になる
相棒の「アンケートの点数で、本当に成果と言えるのかな」って疑い、的外れじゃないみたいなんだ。
研修の効果を調べた研究をまとめると、「満足したか」の点数より、「仕事で役に立ちそうか」を聞いた答えのほうが、学んだことや職場での行動と強く結びついていたんだって。聞き方を変えると、アンケートは行動の変化の手がかりになりうるんだね。
それから、成果を数字ひとつで示せないとき、「施策→人の行動の変化→その先の成果」という筋道を一歩ずつ示して、その施策の貢献を説明する考え方もあるんだ。

そう考えると、相棒が試したアンケートもエピソードも、ちゃんと筋道の一部だったんだね。足りなかったのは中身じゃなくて、価値を受け取っていない仲間にも、その先までたどれる線のほうだったのかも。
点はもう、ちゃんと光ってたんだね
自分の成果のものさしを、自分で決めていいんだ
相棒はね、同じことで悩んでいる人に「自分の評価を、徹底的に考えよう」って言いたくなるんだって。
相棒は、ティール組織を目指す会社では、自分の成果を腹を括って言葉にしていくしかない、と感じているんだ。でもそれは、ティールじゃない職場でも、裏を返せばものさしを自分で作っていいってことでもあると、ボクは思うんだ。
まずは、いま開いている成果の欄に、1つだけ「やったこと→変わった行動」の順で書いてみて。10分でいいよ。
慣れてきたら、こんなこともできるよ。
- 🐋期のはじめに「誰の、何が変われば成果か」を1行で書く
- 🫧その1行を、評価する人に先に見せておく
- 🐚アンケートに「仕事で役に立ちそうか」の問いを1つ足す
- 🌊評価の時期は「やったこと→変わった行動→その先」の順に並べる
見せるときは「来期はこれを成果として見てほしいんだけど、ズレてないかな?」って聞くだけでいいんだ。アピールじゃなくて、確認だよ。筋道なら「盛る」必要もない。起きたことを、順番に並べるだけだからね。
深海のお魚も、光を強くしなくていいんだ。届く道があれば、上からもちゃんと見える。きみの光の道筋、ひとつだけ引いてみない?
ここまで一緒に潜ってくれてありがとう! 次はこっちも覗いてみてね。
がんばりが報われない理由を、もう少し深く潜ってみる?
がんばりと評価のズレがどこから来るのかを、地図にして整理した記事もあるよ。360度評価に「映りにくい人」がいる理由は、こっちの記事で潜っているんだ。
360度評価で「ちゃんと見てもらえてない」と感じたら
論文 · 1995ウェインとライデン
上司と部下のペアを時間を追って調べた研究。部下の印象づくりの行動が、上司の好意や「自分と似ている」という感じ方を通して、半年後の評価に間接的に影響していたことを示した。
論文 · 1996ゴードン
取り入る振る舞いが評価に与える効果を、多くの研究をまとめて調べた分析。業績の評価への効果は小さな正の効果で、好意への効果はより大きく、見抜かれやすいやり方だと効きにくいことを示した。
書籍 · 2018フレデリック・ラルー
組織の形を段階に分けて色で描き分け、その先にある「ティール(進化型)」の組織を、実際の企業の例から描いた本。原書は Laloux(2014)。
論文 · 1995ボマーほか
同じ人の仕事ぶりを、数字の指標と人の評価の両方で測った研究をまとめた分析。両者の関連は中くらいで、片方でもう片方を置き換えられるほどは一致しないと結論づけた。
論文 · 1997アリガーほか
34の研究をまとめて、研修の効果の測り方どうしの関係を調べた分析。受講者の反応のうち「役に立ちそうか」の答えは、「満足したか」の答えより、学習や職場での行動と強く結びついていたことを示した。
論考 · 2001メイン
施策の成果を数字ひとつで示しにくいとき、施策から成果までの筋道を一歩ずつ根拠とともに示して「貢献」を説明する「貢献分析」という考え方を提案した。
