評価を開いたら「控えます」が並んでた?
「自分、ちゃんと見てもらえてないのかな」――評価の結果を開いたとき、そんな声が胸の中で聞こえたこと、ないかな。
深海3000mはね、真っ暗なんだ。ライトを向けた場所だけが、ぽっと明るくなる。そこに何がいても、光が当たらなければ、いないのと同じように見えちゃうんだよ。
ボクの相棒の職場には、上司だけじゃなくて、同僚や後輩もふくめて、仕事で関わった人たちが評価をつける360度評価があるんだ。半年に1回、まわりの人から点数とコメントが届く。
評価の結果を開いたら、「関わりが浅いので、コメントは控えさせていただきます」という言葉が、いくつも並んでいたんだって。
ほかのコメントも一言くらいで、一緒にやった具体的な仕事にもとづいて書かれたものは、あまりなかったんだ。
いろんな人と一緒に働いたはずなのに、届いたのは「控えます」の並び。これ、けっこうこたえるよね。
光が当たらなかっただけなのに、いなかったみたいに扱われるのは、さみしいよね。
4つのチームを回してるのに、なんで映らないの?
でもね、ちょっと考えてみない? 相棒は、なにもしていなかったわけじゃないんだ。
相棒は、4つのチームでリーダーをしているんだって。社内のイベントや研修、人を育てる仕事。研修なんて、中身ごとにまた別の関係者がいるから、関わる人の数はすごく多い。
しかも相棒の役回りは、目立つことじゃないんだ。チームの目指す姿や進め方を描いて、メンバーが自分たちで動ける状態を、裏でつくること。うまくいけばいくほど、メンバーが自分で動いたように見える仕事なんだよ。
関わる人は多い。でも、1人ひとりと関わる時間は短い。そのうえ、仕事の中身は裏方。
リーダーじゃなくても、兼務していたり、いろんなチームを手伝う役回りだったりすると、同じ形になることがあるよね。
じゃあ、評価が低いのは、がんばりが足りなかったからなのかな。
相棒はね、自分が評価を書く側に回ったときのことも話してくれたんだ。後輩などには、しっかり書ける。でも、立場が上の人や、関わりの浅い人には、書かないか、一言二言で終わってしまった。忙しい時期で、書く時間もなかったんだって。
書かれる側からも、書く側からも、同じ形が見えたんだね。
ねえ、書く側に回っても書けないなら、それって書かれる人のがんばりだけの問題じゃないよね?
360度評価に映りやすいのは「近さ×回数」なんだ
なんでそうなっちゃうのかな。
評価ってね、人の頭の中で、見る → 覚えておく → 思い出す → まとめて点をつける、という順番でつくられるって考えられているんだ。だから、そもそも見ていない仕事や、見たけど忘れてしまった仕事は、評価に入りようがない。
半年に1回の評価だと、書く人は半年ぶんの記憶をたどることになる。関わりが浅い相手なら、思い出せる場面は数えるほど。どうしても、切れ切れの記憶で書くことになっちゃうんだ。
あなたの評価に一言しかなかったのも、書いた人の頭の中に、思い出せる場面が少なかっただけかもしれないよ。
もう1つ、見えにくさには理由があるよ。人の成長を支えたり、チームがうまく回るように整えたりする仕事は、職場で「本当の仕事」として扱われにくくて、いつのまにか見えなくなってしまう、と指摘した研究があるんだ。相棒の「裏でつくる」仕事は、まさにこの形だよね。あなたが「目立つことはしてないし」と思っている仕事も、同じかもしれないね。
それに、書く人にも事情がある。相棒のまわりでも、書く量に偏りがあるって声があったんだって。
上司だって、全部を見ているわけじゃない。上司とは受け持っている範囲がちがうから、見えている場面もちがうんだ。このずれは、上司に期待しなくなった話でも潜ってみたよ。
光が届く距離は決まってるのに、広い海を泳いでいたら、そりゃ映りにくいよね。
コメントが薄いのは、価値が低いからじゃない
ここまで潜ってみると、見えてくることがあるんだ。
「控えます」が並んだとき、「結局、自分が足りないんじゃないか」って思わなかったかな。
ボクはね、そうじゃないと思うんだ。
360度評価に映るのは、あなたの仕事の大きさそのものじゃない。あなたの仕事が、どれだけ近くで、何度見られたかなんだ。広く関わって、裏で支える人ほど、光が当たる時間は短くなる。
だから、コメントが薄いのは、あなたの価値が低いという意味じゃない。仕組みの光が届きにくい場所で泳いでいた、ということなんだよ。
相棒もね、「断片的な関わりと記憶で評価されるかぎり、今より高い評価を得るのには限界がある」と感じたんだって。ボクはそれを、あきらめじゃなくて、「足りないのは自分じゃなくて、光の当たり方のほうだ」って見つけたことだと思うんだ。
いますぐ何かを変えなくても、大丈夫だよ。ただね、仕組みのせいだと分かっても、待っているだけでは光の当たり方は変わりにくいんだ。だから次は、自分にできる小さなことを、一緒に考えてみよう。
映らないのと、いないのとは、ぜんぜんちがうんだよね。
映らないなら、自分で灯りを持っていこう
光が届かないなら、自分で小さな灯りを持って、見てほしい場所を照らしにいけばいいんだ。
相棒が、同じように働く人に伝えたいのは、「自分の行動と成果を伝えることに、しっかり力を入れたほうがいい」ってことなんだって。
自分のことを伝えるのって、裏で支えてきた人ほど、ちょっと気が引けるよね。でも、自分をよく見せるためじゃなくていいんだ。関わった人から、行動への感想や、次に期待することをもらう。その声を材料にして、自分の仕事を言葉にして届ける。自分の言葉だけじゃなくて、まわりの声を借りて語るんだよ。
実際、360度評価のあとに評価をくれた人と話したり、どうしたらいいか意見を求めたりした人ほど、その後の評価が伸びやすかったという研究もあるんだ。
だからボクからの提案は、まずこれ。
次の評価を待たずに、今週のどこかで、一緒に仕事をした人を1人選んで、「一緒にやった〇〇で、良かったところと、次に期待することを一言ください」と聞いてみる
最初の1人は、話しかけやすい人でいいんだ。関わりが浅い相手にいきなり頼むのは、ちょっと勇気がいるからね。相手が忙しそうなら、チャットで一言でいいよ。もらった言葉は、自己評価に書く材料にもなるし、相手があなたの仕事を思い出すきっかけにもなるよ。
相棒もね、これはまだできていないんだって。だからこれは、答えを見つけた人の話じゃなくて、同じ海を泳いでいる途中の話なんだ。
もし、あなたが評価の仕組みをつくる側にいるなら、「どれくらい関わったか」を書く欄をつくったり、半年を待たずに一言を送り合える場をつくったりするのも、光を増やす方法になるかもしれないね。
映らなかったあいだも、あなたがそこで泳いでいたことは変わらないよ。暗い海でも、灯りを持って泳げば、見てほしい場所は照らせる。おともだちも、まずは1人に、声をかけてみてね。
- 🐋360度評価に映りやすいのは「近さ×回数」
- 🫧裏で支える仕事ほど、光が当たりにくい
- 🐚コメントが薄いのは、価値が低いからじゃない
- 🌊1人に「良かったところと、次に期待すること」を聞いてみる
ここまで一緒に潜ってくれてありがとう! 次はこっちも覗いてみてね。
評価のもやもやを、仕組みから眺めてみる?
「何を測って、誰が見ている?」をふくめて、組織のもやもやが生まれる4つの場所を、深海から地図にしてみたよ。
論文 · 1984デニーシほか
評価する人が、相手の仕事を見て、覚えて、思い出し、まとめて点をつけるまでの頭の中の流れを、モデルとして示した論文。
論文 · 1998ジョイス・フレッチャー
技術者として働く女性たちの観察から、人を支えたりチームを整えたりする関わりの仕事が、職場で「本当の仕事」として扱われず、見えなくなっていく仕組みを論じた。
論文 · 2005スミザーほか
24の研究をまとめて調べ、360度評価を受けたあとの伸びは平均すると小さいことを示した。評価をくれた人と話し合ったり、意見を求めたりした人ほど伸びやすかったという研究も紹介している。

