休みなのに、頭の中はずっと月曜日
「土曜の朝なのに、もう月曜のことを考えてる」。そんな週末、ない?
深海にいるボクらクジラはね、ときどき水面に上がって息つぎをするんだ。ちゃんと息を吸えたら、また深くまで潜っていける。でも、もし足に重りがついたままだったらどうだろう。水面には出ているのに、体はずっと下に引っぱられて、息つぎした気がしないよね。
ボクの相棒にも、そんな時期があったんだって。何年か前、仕事の量が多すぎてさばききれなくて、毎日22時ごろまで残業していたころのこと。土日はちゃんと休みなのに、頭の中は月曜からの仕事でいっぱい。相棒はそれを「脳内メモリを取られてしまう」って言っていたよ。
相棒は、休むのが悪いことだとまでは思っていなかったんだって。それなのに、休みなのに、休んでいる感じがしない。そんな状態が続いていたんだ。
体は休みの日にいるのに、頭だけ平日に置いてきちゃった感じ、わかるよ〜。
土日にちょっと片づけると、楽になるよね?
相棒は、土日にパソコンを開いて仕事をすることもあったんだって。ただ、無理はしなかった。自分のペースで、しんどくならない範囲だけ。
そうしてタスクを少し片づけておくと、平日の「億劫だなあ」って気持ちが少し和らいだんだって。月曜の朝に待っている山が、ほんの少し低くなる感じかな。
こういう話をすると、「休日に仕事をするなんてダメだよ」って言われることが多いよね。休みの日は仕事から完全に離れるべき。それはたしかに、よく聞く正論なんだ。
でもね、ちょっと考えてみない? 相棒は、少し片づけることで実際に楽になっていた。それを「休み方が下手だから」「切り替えができていないから」で片づけてしまっていいのかな。
もしかすると、問題は休みの日の過ごし方じゃなくて、もっと別のところにあるのかもしれない。休日に頭から離れないのは、そもそもなぜなんだろう?
休日に仕事をするのは、いけないこと? それとも、そうしたくなる理由があるのかな?
終わってない仕事は、頭に居座るんだって
会社で働く人たちを5週間追いかけた調査ではね、終わっていない仕事を抱えたまま週末に入ると、週末のあいだも仕事のことを考え続けやすく、眠りにも響くことがわかったんだ。片づいていない仕事は、休みの日にも頭の中に居座るんだね。
じゃあ、週末に少し仕事をするのはどうなんだろう。14週間、週末ごとに様子を調べた研究があるんだ。そこでは、終わっていない仕事があると、週末に仕事から心が離れにくくなっていた。でも、週末に自分から少し仕事をして「進んだ」と感じられたときは、その悪い影響が打ち消されていたんだって。一方で、義務としてやらされる残業は、休みの質を下げていたんだ。
だから、土日にちょっと片づけたくなるのは、おかしなことじゃないんだね。ただ、「やらないと月曜が回らない」って思いながら開くパソコンは、もう「自分から」とは言いにくいのかもしれない。
休みの日の回復には、仕事から心を離すことのほかにも、ゆっくりくつろぐことや、自分で決められる感覚など、いくつかの種類があると考えられているよ。相棒がマイペースでやる分にはしんどくなかったのは、このあたりとつながっていそうだね。
でも、話はここで終わらないんだ。たくさんの研究をまとめた分析では、仕事の量が多い人ほど、仕事から心が離れにくい傾向があったんだ。相棒も、マイペースを守っていたのに、最後はパンクして1か月休むことになったんだって。そのときの話は「仕事がしんどいのは甘え?」にも書いたよ。
少し片づけると楽になるのは本当。でも、それだけじゃ量は減らないんだね。
休日の問題じゃなくて、平日からあふれてたんだね
相棒は、そのあと自分のことをじっくり振り返るなかで気づいたんだって。これは、組織の構造の問題だったって。
相棒がいたのは、上司がいない組織だった。本当なら、誰かが仕事の量を見て、調整する役割を持っているはず。でもその役割が抜け落ちたまま、それが当たり前になっていたんだ。上司がいる職場でも、仕事の量まで見てくれているとは限らないよね。あなたの職場には、量を見て調整してくれる人、いるかな? 上司がいない組織で起きやすいことは、「自律型組織で感じる「このままでいいのかな」」でも書いているよ。
当時の相棒は、頼まれた仕事を「やらなきゃ」と引き受けて、急ぎのものから手をつけていた。いま振り返ると、効率化みたいな、大事だけど急ぎじゃない仕事は、あの量なら手をつける必要はなかったと感じているんだって。やることを減らすのも、仕事のうちだったんだね。
最後は、異動することで解決したんだ。急ぎの仕事に追われる日々から離れて、急ぎじゃないけど大事なことに時間を使えるようになった。仕事の量を自分でコントロールできるようになっていくと、休んだ気がする感覚も戻ってきた。休日に、ちゃんと余白ができたんだって。
異動できるかどうかは、人や職場によってちがうよね。相棒の話で大事なのは、異動そのものより、仕事の量を自分で調整できるようになったこと。そこなら、いまの場所でも少しずつ近づけるかもしれないんだ。
つまりね、相棒が休日に休めなかったのは、休み方が下手だからじゃなかった。平日の量が、休日まであふれていたんだ。休日に少し片づけるのは応急処置にはなる。でも、量そのものは平日の側でしか減らせないんだね。
もしいま「自分は休むのが下手なんだ」って思っていたら、ちょっと待ってね。休日に頭が月曜でいっぱいになるのは、あなたの切り替えが下手だからじゃなくて、それだけ平日の荷物が重いってことかもしれないよ。
重りを外すのは、息つぎの時間じゃなくて、潜っている時間のほうだったんだね。
金曜の終わりに、8分だけ来週を書き出そう
じゃあ、量が多いと感じている今、何ができるんだろう。
週に1回、8分ほど計画を立てるだけの実験があるんだ。考えるのは、仕事の優先順位や進め方、つまずきそうなところ。それを5週間続けたら、終わっていない仕事が減って、仕事のあとに考え続けてしまうことも減ったんだって。
そこでボクからの提案。まずは、金曜の終わりに8分だけ時間を取ってみようよ。書き出すのは2つだけ。2つめは、相棒が「はっきりさせておけばよかった」と振り返っていたことなんだ。
- 来週、いちばん大事なこと
- やらなくていいこと、後回しにしていいこと
書き出すだけでも、頭の中の居座りは少し軽くなるはず。もし余裕があったら、2つめから1つだけ選んで、その仕事を頼んだ人に「来週はこれを優先したいので、こっちは後回しでもいいですか」って聞いてみて。忙しそうな相手に言うのは、気が引けるよね。でも、何を後回しにするかが先に分かるほうが、相手にとっても動きやすいかもしれないよ。
相棒はね、自分の心と体は自分で守る必要があった、と振り返っているよ。だからあなたも、自分を守るために動いていい。でも、仕事の量を見て調整するのは、本当は上司にあたる人の役割でもあるんだ。ひとりで全部抱えなくていいんだよ。
休日の重りは、金曜のうちに少しずつ外していこうね。
ここまで一緒に潜ってくれてありがとう! 次はこっちも覗いてみてね。
しんどさが続いているなら
休日に休めない日が続いて、心や体がつらくなってきたら、こちらの記事も読んでみてね。
論文 · 2014シレックとアントニ
会社で働く89人を5週間追いかけた調査。終わっていない仕事を抱えて週末に入ると、週末に仕事のことを考え続けやすく、眠りにも響くことを明らかにした。
論文 · 2017ヴァイゲルトとシレック
会社で働く83人を14週間調べた研究。終わっていない仕事は週末に心を離しにくくするが、週末に自分から少し進められるとその影響が打ち消され、義務の残業は休みの質を下げることを明らかにした。
論文 · 2007ゾネンタークとフリッツ
仕事からの回復を測る質問票をつくった研究。心を離す・くつろぐ・何かを身につける・自分で決める、の4つの回復の種類を示した。
論文 · 2017ヴェンチェとローマン=ハイスラー
86の研究をまとめた分析。仕事の量が多い人ほど、仕事の外で心が仕事から離れにくいことを示した。
論文 · 2023ウーリッヒほか
会社で働く人たちが週1回・8分ほど仕事の計画を立てる実験。5週間続けると、終わっていない仕事と、仕事のあとに考え続けることが減った。

