月曜の朝、仕事の伏線は回収されないまま?
※ この記事は、ドラマの筋のネタバレはしないよ。
「これって、全部何につながってるんだろう」。日曜の夜に VIVANT を観て、バラバラだった点が一本の線になる気持ちよさにひたったまま迎えた、月曜の定例。各チームが報告をして、そのまま終わる。自分の仕事も、隣のチームの仕事も、どこかへ向かっている気はするのに、つながりが見えない。
いろんな組織の思惑が絡み合って、バラバラに見えた点が、ある瞬間に一つの大きな物語へまとまっていく。あの感じ、たまらないよね。ボクもそれ、わかるよ〜。深海3000mはまっ暗だから、近くの魚の光が一つずつ、ぽつ、ぽつと見えるだけなんだ。でも少し上に浮かんで引いて見ると、その光が群れの形になって、同じ方向へ泳いでいるのが分かることがあるんだよ。
ドラマなら、最後には誰かが伏線を回収してくれる。でも職場では、回収の場面がなかなか来ない。だから「自分は役に立ってるのかな」「この会社、バラバラなだけじゃないかな」って、こっそり思っちゃうんだよね。
ねえ、仕事の伏線って、誰が回収してくれるんだろうね?
全体が見えないのは、会社がダメだから?
まず、ちょっと考えてみない? 会社の方向は、最初から全部決まっていて、見えているはず。そう思っていると、見えないのは「会社がダメ」か「自分が分かってない」か、どっちかになっちゃう。
でもね、組織の戦略を調べた研究者たちは、戦略には2つの顔があるって考えたんだ。一つは、最初に計画して、そのとおりに進める戦略。もう一つは、現場のひとつひとつの動きが積み重なって、後から一つのパターンとして現れる戦略。現実の戦略は、その2つのあいだのどこかにある、と整理されているんだよ。
自律型の組織だと、後のほうの顔が大きくなりやすいのかもしれないね。上から一本の線を引くかわりに、一人ひとりが自分の目的で動くからね。そうすると、動いている最中は、点が散らばっているようにしか見えない。それは失敗のしるしじゃなくて、物語がまだ途中なだけかもしれないんだ。
伏線って、張っているときは、ただの何気ない場面にしか見えないもんね。
伏線は、振り返ったときに伏線になるんだ
なんでそうなっちゃうのかな? 人が出来事の意味をつかむときのことを考えた研究では、意味づけは、やったことを振り返りながら作られていくと言われているんだ。先に意味があって動くというより、動いたあとで「あれはこういうことだったのか」と分かっていく。ドラマの伏線も、回収された瞬間に、はじめて伏線になるよね。
ボクの相棒は、人材開発や組織開発に携わっているんだ。社内では、「斜めの関係」をつくる動き、組織らしさを形づくる動き、採用の動きが、それぞれ別々に進んでいる。相棒はいま、それらをつないで一つのストーリーにする役をやっているんだって。それぞれの動きの解釈を、組織のミッション・ビジョン・バリューと結びつけていくと、動きどうしの関係が少しずつはっきりしてくる、と相棒は感じているんだ。
相棒はこうも言っていたよ。自律型の組織でも、一人ひとりが自分の目的に向かって動いて、いろんな思惑が交わる。それでも引いて見ると、大きなストーリーが見えてくる、と相棒は感じているんだって。
会社のミッションを読み返しても、自分の仕事とは遠く感じること、あるよね。ミッションは物語の最後のほうにあって、そこまでの途中の点は、誰かが一つずつつながないと見えにくいのかもしれないね。
ある大学の変革を追った研究でも、トップは自分で意味をつかむことと、その意味を周りに示すことを行き来していたんだ。意味を示す役は、ドラマでいえば、散らばった場面を一本の線にしてみせる語り手みたいなものかもしれないね。
自律型の組織でも、進む方向をそろえることと、動きを調整することは必要で、それを上司以外のしくみで担う、と整理されているよ。つまり、物語を語るのは、上司だけの仕事とは限らないのかもしれないね。
回収する人がいないと、伏線は散らかった場面に見えちゃうのかもね。
物語がないんじゃなくて、まだ語られていないだけ
実はこういうことだったんだね。バラバラに見えるとき、物語がないわけじゃない。まだ、誰も引いて見て語っていないだけかもしれないんだ。
物語には、別々の取り組みを、ほかの人にも分かる言葉に訳して、過去と今をつなぐ働きがあると考えられているよ。相棒が社内でやっているのも、この「訳してつなぐ」仕事に近いのかもしれないね。
それに、つなぐ役は、会社の全部を背負う人だけじゃないんだ。自分の手元の仕事1本ぶんなら、少しだけ自分でも語れる。全部をひとりで回収しなくていいんだよ。
自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できたとき、成果や助け合いが増えた、という実験もあるんだ。
だからね、「自分、役に立ってるのかな」って思っても、それはあなたの力が足りないせいじゃないかもしれない。誰の役に立っているかが、まだ言葉になっていないだけかもしれないんだ。答えは、いますぐ出さなくていいよ。
- 🐋会社の方向は、後から形になることもある
- 🫧意味は、振り返りながら形になっていく
- 🐚つないで語ると、点が線に見えてくることがある
- 🌊見えないのは、まだ語られていないだけかも
暗い海でも、引いて見れば、光の群れはちゃんと泳いでるんだよ。
今週の仕事に、1行だけ伏線メモを書いてみようよ
まずは、これをやってみようよ。今週やった仕事を3つ書き出して、それぞれに「誰の、何につながっているか」を1行ずつ足してみるんだ。ボクはこれを「伏線メモ」って呼んでるよ。
全部埋まらなくていいんだ。1つでも書けたら、そこが自分の物語の入口になる。どうしても書けないものが残ったら、そのうち1つだけを、隣の部署の人や少し離れた先輩に「これって、どこにつながってると思う?」って聞いてみてね。
「これ何のため?」って上司に聞くと、やる気がないみたいに聞こえないか心配になるよね。そんなときは、斜めの関係の人に「いまこれをやっていて、ほかの何とつながっているか知りたくて」って聞いてみると、前向きな質問として伝わりやすいかもしれないよ。
1か月後に伏線メモを読み返すと、そのときは見えなかったつながりが見えることがある。それが、あなたの仕事の伏線回収なんだと思う。暗い海で、自分の光が群れのどこにいるのか、少しずつ見えてくるみたいにね。
ここまで一緒に潜ってくれてありがとう! 次はこっちも覗いてみてね。
聞きやすい「斜めの相手」を見つけてみる?
上司でも同僚でもない、少し離れた人との関係が、困ったときの逃げ場になる話を書いたよ。
論文 · 1985ミンツバーグとウォーターズ
企業の戦略を調べ、最初から意図した戦略と、行動の積み重ねから後で現れる戦略を両端に置いて整理した。現実の戦略はその間にあると論じた。
論考 · 2005ワイクほか
人が出来事の意味をつかむ過程を整理した。意味づけは、いまの行動を説明できる像を、振り返りながら作り続けることだと考えられている。
論文 · 1991ジョイアとチッティペッディ
ある大学の変革の最初の1年を追った事例研究。トップの役割を、自分で意味をつかむことと、それを周りに示すことの行き来として捉えた。
論考 · 2019マルテラ
組織が解くべき問題に「方向を示すこと」と「調整すること」があり、自律型の組織はそれを上司以外のしくみで解く、と整理した。
論考 · 2009バーテルとガルド
組織の中の物語は、アイデアをほかの人に分かる形に訳し、過去の経験と今の取り組みをつなぐ働きをすると論じた。
論文 · 2008グラント
3つの現場実験で、仕事が誰かの役に立つことを伝えると、募金の電話かけの成果や、ライフガードの助け合いが増えた。効果の大きさは人の性格や価値観で変わった。

