上司にがっかりするの、もう疲れちゃった?
「また『優先度が低い』って言われた。もう、上司に期待するのはやめようかな」――そんなふうに思ったこと、ないかな。
深海3000mでもね、群れの向きがそろわない日があるんだ。みんな同じ海を泳いでるのに、見ている光がちょっとずつ違うから、少しずつ進む方向がずれていくんだよ。
ボクの相棒も、最近そんな感じなんだって。相棒は会社で、社内の組織づくりのチームを引っぱっている。部署をまたいだ斜めの関係をつくる仕組みとか、一人ひとりの熱量を高める社内イベントとかね。すぐに数字にはならないけど、組織文化の土台になる仕事なんだ。
でも上司からは、会うたびに「そこは優先度が低いよね」って言われるんだって。何度か話をして、そのたびに少しがっかりして。そのうち、上司に期待すること自体をやめちゃったみたい。
期待しなくなった自分が、ちょっと冷たい人間になったみたいで、それもモヤモヤするんだって。
がっかりするのに疲れたら、期待しないほうが楽だもんね。ボクもわかるよ〜。
みんなで評価するはずなのに、なんでずれるの?
でもね、ちょっと考えてみない? 相棒の会社は、上下関係に頼らず、役割ごとに自分で決めていく「ティール型」に近い組織なんだ。評価も上司ひとりじゃなくて、まわりの人たちがつける360度評価になっている。
ところが前回の評価では、評価する人を選んだのが上司で、選ばれたのは上司から見えている仕事の関係者ばかりだったんだって。相棒の仕事を一番近くで見ていた人たちは、そこにいなかった。
仕組みはみんなで評価する形なのに、なんでずれは消えないんだろう。やっぱり上司が悪いのかな?
ねえ、みんなで決めるはずの組織なのに、なんで「一人の物差し」が残っちゃうんだろうね?
深海から見ると、ずれの通り道が見えるんだ
深海の底から見ていると、ずれには通り道があるのがよくわかるんだ。
ひとつめは、背負っている範囲が違うと、物差しも違うこと。相棒の上司は、社外に向けた仕事、たとえば採用に責任を持っている。相棒は、社内の組織づくりに責任を持っている。同じチームでも、背負っているものが違えば「大事なこと」の順番は変わるんだよね。人間の研究では、役割ごとの期待がぶつかり合う状態を役割葛藤って呼ぶんだって。それが長く続くと、自分らしさまで削られるほどしんどくなるって言われているよ。
ふたつめは、評価の違いは、見ている場面の違いから生まれること。360度評価で、評価する人によって点数が違うのは、評価する人の偏りというより、その人が見ている場面が違うからだ、という研究もあるんだ。上司の目に映る相棒と、仕組みに参加した人の目に映る相棒は、そもそも別の姿なんだね。
みっつめは、形がフラットでも、決める権限が1か所に残ると、そこを通ってずれが流れ込むこと。仕組みがあっても、それを読み取るのが1人だと、その人に見えている範囲に引っぱられちゃうんだ。だから、評価する人は本人と上司が一緒に選ぶのがいいって言われているんだって。ティール組織でも、仲間同士で評価し合う仕組みがすすめられているよ。
つまり、あなたの仕事が評価に映らないのは、仕事が小さいからじゃない。映る場所が限られているからなのかもしれないんだ。
上司がいじわるなんじゃなくて、見えている海の範囲が違うだけなのかもね。
わかってもらえても、ずれは続くんだね
相棒はね、ちゃんと上司に伝えたことがあるんだって。自分が大事だと思う観点が評価に入っていないって。上司はそれを理解してくれて、気づきも生まれた。次の評価では変わるかもしれないって、相棒は思っている。
それでも、調整のたびにずれは生まれ続けている。ここが大事なところなんだ。わかってもらえても、ずれは続く。原因が人の理解じゃなくて、背負っている範囲の違いという構造にあるからだよ。
だから、期待しなくなったのは、あなたが冷たいからじゃない。同じ構造に何度もぶつかって、心が自分を守ろうとしただけなのかもしれないね。
それとね、「優先度が低い」と言われることと、あなたの仕事に価値がないことは、別の話なんだよ。優先度は、背負っている範囲から見た順番にすぎないからね。
相棒は、自分の仕事の優先度を3つに分けて考えているんだって。
- 続いていく仕組み(土台)をつくる:優先度が高い
- 続いている状態を保つ:優先度が高い
- そのうえで、+αをどこまでやるか:優先度は低い
全部が大事なんじゃなくて、「ここまでは守りたい」がはっきりしているんだ。
責めるのは上司でも自分でもなくて、ずれを生む形のほうだったんだね。
まずは、自分の手応えを書き留めてみようよ
構造の問題なら、正しさでぶつかるより、形のほうに手を入れてみようよ。
ボクからの提案は、まずこれ。
評価の外の手応えを、自分で書き留めておく
仕組みが続いている事実や、参加した人の「よかった」の声を、1行ずつメモしていく。上司に何かを頼まなくても、今日から1人で始められるよ。書き留めた手応えは、自分の仕事の価値を、自分で見失わないための支えになるんだ。
少し余裕ができたら、こんなことも試してみてね。
- お互いの地図を並べる:まずは自分の分だけ、責任範囲と、それが共通の目的のどこに効いているかを1枚に書いてみる。見せ合うなら、「次の1on1で5分だけ、お互いの持ち場を並べてみませんか」と声をかけるくらいでいいんだ。「どっちが正しいか」が「範囲が違うだけ」に変わるよ
- 「必須」と「+α」の線を先に決める:相棒の3段階を使って、どこまでが必須で、どこからが+αかを上司とすり合わせる。「優先度が低い」と言われる範囲を、+αだけに小さくできるんだ
評価は、すぐにはついてこないかもしれない。それでも、自分の信じる道に一歩ずつ進んでいけば、いつか届く日が来るって相棒は言っていたよ。
でもね、相棒もまだ途中なんだ。一歩ずつ進んでいるけど、評価はまだで、もどかしいんだって。だからこれは、答えを見つけた人の話じゃなくて、同じ海を泳いでいる途中の話なんだよ。見ている光がちがっても、自分の光だけは見失わずに泳いでいこうね。
- 🐚評価の外の手応えを、自分で書き留める
- 🗺️お互いの責任範囲を1枚に並べる
- 📏「必須」と「+α」の線を先に決める
- 🐋信じる道に、一歩ずつ泳ぎ続ける
ここまで一緒に潜ってくれてありがとう! 次はこっちも覗いてみてね。
組織のずれは、どこから生まれるんだろう?
上司と部下のすれ違いの奥にある「組織の問題の生まれ方」を、深海からまとめて眺めてみたよ。
書籍 · 1964ロバート・カーンほか
まわりから求められる役割がぶつかり合う状態(役割葛藤)が、働く人の大きなストレスになることを示した古典的な研究。
論文 · 2012ノワックとマシヒ
360度評価の使い方を、研究をもとにまとめた論文。評価する人ごとに結果がちがうのは、評価のゆがみというより相手ごとに見せている面がちがうから、という研究(Scullen ほか, 2000)や、評価する人は本人と上司が一緒に決めるのが望ましいという研究(Bracken & Rose, 2011)を紹介している。
書籍 · 2014フレデリック・ラルー
上下の階層に頼らずに運営している組織の事例を集めた本。上下関係が生まれないよう、仲間どうしで評価し合う仕組みが紹介されている。
Laloux, F. (2014). Reinventing Organizations. Nelson Parker.

